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yunosatodays

北海道ニセコ山麓、廃校の木工房。湯ノ里デスクの田代がお届けする、モノ作り&山暮らし通信です。

修行の日々・・3 「デザイン」

木工の修行を始めてから9ヶ月が過ぎた頃、

僕にとって、大きなピンチがおとずれた・・!

 

季節は、飛騨で迎える、初めての冬。

 

 きっかけは、

翌春に紀伊國屋画廊(新宿)でひらかれる予定の、

森林たくみ塾の「作品展」。

 

僕ら1年目の塾生にとって、

初のオリジナル作品を展示販売する機会!

 

それで、ピンチとはつまり・・

「デザイン」。

 

 

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入塾以来ずっと、

指導された通りに、ひたすら製品を作って来た。

 

しかし今度は、オリジナルの作品だ。

それも、販売される・・!

 

 

 

12月の初旬、塾の師範や理事長たちを前に、

各自プレゼンテーションを行った。

 

 生まれて初めて経験する、企画とデザインのプレゼン。

 

同期のほとんどが審査を通過する中、

僕の案は「やり直し」を命じられた・・。

 

『アイディアは面白いけど、デザインが駄目』と、

師範に言われたのだ・・。

 

 

帰宅後、

悔しいながらも、さっそく次案にとりかかった。

 

しかし、何ということか・・!!

次の手をどう打ったらいいのか、

その後の僕は、わからなくなってしまったのだ・・。

 

 

アイディアはいいが、デザインが悪い。

 

仮にアイディアを出せても、

それを具体的なデザインに起こす力は、また別物なのだ

・・という事実を、

このとき初めて、僕は思い知ることになった。

 

 

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そもそも、僕はこれまでの人生で、

デザインについて考えたことなど、ほとんど無かった。

 

このブログを 最初から読んで下さっている方々には、

きっとおわかりいただけると思う。

 

 僕は最初から、

「木工」や「家具作家」に憧れていたわけではなかった。

 

『自分の生き方をどうしよう??』と右往左往するうち、

オークヴィレッジ(と、森林たくみ塾)に出会った。

 

 稲本正さん率いるオークヴィレッジの、

モノ作りをしながら田舎で生活する・・という、

 「ライフスタイル」の部分に憧れたのだ・・。

 

 

過去に僕は、「デザイン」の勉強はおろか、

ほとんど意識したことすらも無かった・・。

 

 

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どうデザインしたらいいんだろう?

 

自分の好きなカタチって、何だろう?

 

そもそも、「デザイン」って、いったい何だ??

 

 

・・難しく考え過ぎていたわけではない。

 

何かを真似しようにも、

好みのモノのデザインが、てんでにバラバラで、

一番好きなカタチが何なのかすら、単純にわからなかったのだ。

 

どこを目指せばいいのか、わからなかった。

 

 

君は何が好きなのか、

君は何を目指すのか、

君は何を作りたいのか。

 

 

何かをデザインする、ということは即ち、

自分は何者なのか、と、

突き詰めて自らに問うことであった・・。

 

 

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脱サラ後、初めて重苦しい気分に襲われた・・。

 

頭の中身が軽かった僕は、これまで、

ほとんどプレッシャーを感ずることも無く、

木工の道に飛び込んで来たのだ。

 

アイディアと工夫で、きっとうまくいくと、

「根拠」のない自信があったのだ。

 

だが今、「根拠」が必要とされていた。

 

デザイン力がなければ、

オリジナルな『モノ作り』は出来ない。

 

 

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どうしたらいいのかわからない、

情けない気分だった。

 

解決の糸口がつかめないまま、数日が過ぎたある日、

僕は30歳の誕生日を迎えた。

 

・・こんなに情けない30歳がいるか・・??

 

収入の無い僕に代わり、生活を支えてくれていた奥さんが、

誕生祝いで、高山市内のホテルのランチを予約してくれていた。

 

よし、この食事が終わったら、

今度こそデザインを決めてやる!

 

精一杯の強がりを言って笑って、

重たい気分ごと、僕は食事を飲み込んだ。

 

 

帰り際、会計を済ませている奥さんの背中を、

ぼんやりとロビーの端からながめている時、

ふいにボロボロと熱い涙が、こぼれて落ちた。

 

コンチキショウメ!!

・・と、僕は胸の中で呻いていた。。

 

 

 

その日の晩、何とかかんとか、

ひとつの小さなテーブルをデザインした。

 

苦しんだわりには、何の変哲も無い、

ごく普通のサイドテーブル(座卓)だったけれど・・。 

 

さんざん悩んで、何とか決めた、自分なりの一つの答え。

達成感や満足感は、特になかったけれど、

とりあえずの開放感があった・・。

 

 

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翌年3月の新宿の作品展には、

僕たち1年生は現地に行けなかったのだが・・

僕の初作品の小テーブルは、ちゃんと売れた。

 

買ってくれたのは、

僕と同世代くらいの女性だったそうだ。

 

そしてなんと翌日、わざわざその女性は、

(作者である)僕宛ての手紙を会場に届けてくれたらしい。

 

東京から戻って来た2年生(卒塾生)にその話を聞き、

僕は手紙を受け取った。

 

『こんなテーブルが欲しかった。とても気に入っています』

『このテーブルを作った人に、この感謝の気持ちを伝えたい・・』

 

と、小さな文字で書かれていた。

 

 

その一瞬で、体中の血液が、一気に暖まった。

その一瞬で、何もかも全てが救われた・・。

 

これで良かったんだと、初めて思えた。

 

家に帰り、奥さんにもその手紙を見せて、

その晩は二人でヨロコビの祝杯(ビール)を上げたのだった・・。

  

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 当時作った小テーブルの試作品。

素材はイタヤカエデで、樹皮を生かしたデザインでした。

ひどくボロボロですが、今も使っています・・。